-I'm still here-

一次創作のファンタジー物語と日常を気分で書き連ねる、サイト兼ブログ

ふたり電車の旅 

 

※ただし人間はひとりもいない上にひとりはタダ乗りである。


 座った席の対向の窓から見える景色を眺めながら、カナトはわざわざ電車に乗ってまで遠出するっていつぶりだっけとぼんやり考えを巡らせた。

 平日の午後、会社の昼休みも下校時間も外した穴場の時間だったようで、車内は比較的がらがらな上にいるのは就学前の子どもを連れた母親のグループや、賭博終わりの老人やアクティブに登山終わりなのかそんな装備の老夫婦が割を占めている。

 子どもを連れた母親のグループ…か。

 カナトはこっそりため息をついた。原因は二の腕にずっと当たっている重みだ。小学校入りたてくらいの背丈に見た目のウィンクが眠っている。大人しいのは嬉しいが、問題はそこじゃない気がしてならない。

 こんな顛末になったのは数十分前のことだ。



「ふぅーン」

「明らかに聞き流してるよね」

 カナトはふぅと気を取り直してウィンクにつっこんだ。ウィンクは肩をすくめて、ざっくりと理解したことを指を立てていきながら挙げた。親指から数えはじめる海外のスタイルで、カナトは一瞬ウィンクの言葉よりもそちらに気を取られかけた。

「高山台病院にはデンシャに乗らなきゃ行けナイ。デンシャに乗るにはおカネが必要。トーバはおカネ持ってナイ」

「別にきみの分まで出すくらいいいんだけどさ……」

「そこまで食いしン坊くンに助けられタラ後で何を言われるか、魔法を使わなくても分かるからイヤだ」

 ウィンクの顔が「趣味悪い」と言いたげだ。カナトは苦笑した。ウィンクは腕を組んでひとつ息をついて聞いた。

「おカネは絶対出さナイと乗れナイの?」

「うん。……あ、いや、改札のセンサーに頭が届かない年齢の子は確か運賃なかったような…」

 カナトはうろ覚えではありながらも言い直した。ウィンクがすっと背を伸ばした。それからほんの少し身を乗り出して念を押した。

「なンか言い方が怪しそうだケド、本当の話?」

「えー? 今度は僕が信用されないパターン?」

 茶化しながら、ちゃんと確認しておこうと思い立って、カナトは再びパソコンに向き直ってキーボードを叩いた。

「……、やっぱそうだよかったー。122センチくらいだって――」

 ウィンクを振り返ったカナトは動きを止めた。言葉も止まってしまった。ウィンクがカナトの言葉を受けて、自分の頭に手を当ててうーんと確認している。カナトの視線に気付いて軽く首をかしげてきた。

「122までなら120でも問題ナイよね?」

「ないけど……あのさあ」

 ウィンクはカナトがパソコンをいじっている一瞬の間に身長120センチの幼い少年になっていた。カナトが目を眇める。

「魔法がすっからかんって嘘だよね? 僕が申し出るのをやめさせるための嘘だよね?」

「嘘じゃナイってば、何回言ったら」

「魔法すっからかんって言ってんのに浮いててかつ変身するっておかしいでしょ! そんだけやれば充分あるよ!!」

「コレは別。全然もたないンだもン」

「何の話なの……」

「ヒミツ」

「やっぱりシーズンオフのキミの性格は悪いと思うよ」

 しれっとしているウィンクにせめてもの嫌味を言い放つが、ウィンクはそんなもの聞いていない勢いで大きくあくびをした。

「ふあぁ……。ホラね、全然…ふぁ……行くなら早くして…」

 子どもの姿であくびを連発されると、相手は相手なはずなのになんだか申し訳ない気分になってくる。これはずるい。カナトはウィンクの規格外の魔法力に唸りながら立ち上がった。

「すぐに行けるけど、歩いてる最中に寝られちゃ困るからね? 大体、姿変え分かりにくくなったように見えてるけど実際まだ浮いてるし」

「んー…」

「…足は歩いてるみたいに動かすんだよ?」

「分かってるヨ…」



 車内アナウンスがカナトの思考を現実に引き戻した。よく聞くと次が降りる駅だ。

「次で降りるよ」

「…ン……」

 身じろぎだけして眠り続けるウィンクに改めてため息をついて、カナトはさっきよりもさらに人が減った車内を見渡して、この後にどんな展開が待っているのかぼーっと考えるのだった。



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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
魔法ないって言ってんのに次から次へとチートを繰り出すウィンク、さすがですがなんかもう呆れてくるな……。

午後の日差しも助けて、ウィンクの眠りはきっと心地いいだろうなあ…お昼寝うらやましい(どうした
もし乗ってる途中どこかしらでカナトさんもうとうとしてふたりで寝落ちしてる瞬間があったら、迷いなく正面の席に座って写真撮ります。ていうかもはや混ざって一緒に寝たい(起きる

さていよいよ目的地へ出発したのであともうちょっとになってきていると思います(他人事
もう少しお付き合いお願いいたします!!

category: ハネダさん宅

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