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一次創作のファンタジー物語と日常を気分で書き連ねる、サイト兼ブログ

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無知を悔いる前に 

 

天使界でのお話です。
書きたいシーンを書いてるだけなので、時系列は不明です。あるかもしれないしないかもしれない。


 ロニー! どこかで呼ぶ声がした。

 くるりと椅子を回して書物館の入り口を振り返ると、タイミングを見計らったかのようにバァンと扉が勢いよく開いた。他とは何か違う光の入り方に目を眇める。

「……あぁ、誰かと思えば」

「魔族について、教えてくれ」

 扉を開けたところで弓を持った左腕を垂らし、金色に光る右腕の肘を扉についたなんとも物騒な様子で、それでいてどこか心ここに非ずな声色でつぶやくように口元でそう言ったのはアンネだった。ロニーは少し間を開けてから肩をすくめた。

「下級天使で権天使の君が魔族に興味を持つなんてどういう理由なのかねぇ」

「堕天使についても」

 アンネは左腕を垂らしたままゆらりゆらりと中へ入ってくる。ロニーはその動きをじっと見つめた。

「魔族に左腕を呪われたとでも?」

 彼女は答えない。ロニーはひとつため息をつくと尻尾をひとつ振った。書物館の扉がゆっくりと閉まる。そのまま何かを探すように手を空中でさまよわせる。書物館のあちこちに光が走る。

「知識を集約しているお前だから聞きたいんだ」

「失礼、俺が司ってるのは知識じゃなく歴史だよ。確かにここは書物館で俺はここに幽閉されてて知識が増えるのは必然だろうけど、俺の管轄はあくまで過去の出来事をすべて掌握することさ」

 ロニーは答えながら、彼女の右腕を見やって疑わしげに首をかしげた。

「それよりその腕は? 遂に再生を選択した?」

「輪だ! 突然光ったと思ったら右腕に…! 私は善悪を見極め悪霊を成敗するするために存在している! なのに何故魔族の気配で武器が現れるんだ! 今までこんなことはなかった!」

「さぁね。なんだか上が騒がしい雰囲気はしていたから、もしかしたら全天使に魔族に対する警戒を強めさせているのかもしれないけど」

「魔族がすべて悪とは思わない!」

「それには同感。でもお前の判断基準は?」

「…私は……」

 ロニーが椅子にだらしなく座ったまま腕を組む。ふわふわの前髪に隠れて目は見えないけど、どことなくにらんでいるような雰囲気がある。アンネはようやく顔を上げた。

「私は魔族と関わりがある。奴は悪じゃない。なのに他ときたら魔族というだけで殺せという。私の武器さえも!」

 弓をふりかざす。ロニーが素早く忠告する。

「あんまり無駄に振り回してくれるなよ。そいつが堕天しかけた俺にも牙をむくかもしれないんだから」

「魔族ってなんなんだ! 教えてくれ!!」

 弓の端をロニーの座る椅子に突き刺して、アンネが声を荒げた。左耳をかするような位置に弓を突き立てられて、しかしロニーは呆れるばかりだった。

「知りたいなら教えてやるよ」

------------------

「……理解できた? でもって天使族は一度堕天使になったらもう他の輪廻にうつることはできなくなる。魔族が天使の輪廻にまわってくることもない。奴らは人間の負の感情の化身みたいな存在だからね。天使族に上がってきたって一瞬で堕天使さ」

「…それなのにお前は堕天しようとしたのか?」

「覚悟の上さ。ここや人間界よりはよっぽどましだね。これ以上言うとこれが殺しにかかってくるからそろそろこの話題もやめたいところなんだけど」

 ロニーはピンと己の首にかかっている首輪をはじいた。アンネはそれを見て、ふと目線を落とし左手を見つめた。今は天使の輪と武器の輪は元に戻り、アンネは普段の感じを取り戻していた。…というよりも、少し消沈しているようにも見える。

 無言になったのをいいことに、しばらく気ままに様子を観察していたロニーだったが、アンネの様子にひとつ息をつくと席を立った。背もたれにはアンネが突き立てた弓の穴が残っている。

「気分が落ち着くまでゆっくりしていけば。上の奴らが来るたび精神を落ち着けるためとか言ってよこしてくるお茶が腐るほど余ってるんだ。俺には必要ないけどそっちには必要そうだから出してやるよ」

 気が変わったなら持ってくる前に出てったって構わないしと言い残して、ロニーは翼をはばたかせて書物館の奥へ飛んでいく。その後ろ姿をアンネはちらりと見送った。天使の片翼と、魔族の片翼。魔族の象徴である尻尾と、そこに引っ掛けている天使の輪。

 ……分からない。

 天使族ってなんだ。魔族ってなんだ。

 私は…私は何も分かっていないのか。

 膝に置いている左手を握りしめ、力を抜く。おもむろにその手で右肩に触れた。ずっと前、悪霊に食いちぎられた右腕。右肩におく左手に力が入る。

 確かに一度はしくじった。だが、善悪を見抜く私は何かを間違えているのだろうか。

 何が正しいのか、答えを見つけねば。

 アンネは顔を上げて、ロニーが消えた書物館の奥をじっと見つめた。


・・・・・・・・・・・・・・・・
アンネ嬢とロニーのシリアスが見たかっただけです。

category: 幻想世界絵文

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