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一次創作のファンタジー物語と日常を気分で書き連ねる、サイト兼ブログ

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籠の鳥からの脱出 

 

テング氏が魔族界から人間界への家出(脱出)をするお話。


 魔族界には様々な魔族がいる。

 不安や悲しみ、恐れや怒りなど、その大体が人間の負の感情に関連するものが多い。

 それとは別に、魔族界には「七つの大罪」に所属する魔族もいる。

 暴食、色欲、強欲、憤怒、怠惰、傲慢、嫉妬。

 この7つにはそれぞれ魔王とほぼ同等の地位をもつリーダーがいた。その7匹と魔王は時に集会を行うことがあるのだが……。

「……アスモデウスはまたしても欠席ですか。やはり色欲はだらしがない…」

「ねぇ魔王、わたくしさすがに甘すぎると思いますわ」

 空いている席を睨みながら、口々に非難する。魔王は席に深く座ったまま皆の批難を制した。

「確かに最近は遅れることが多いが、必ずしも欠席とは限らんだろう」

「七つの大罪のいち王の不届きはすなわち我らの不届き……。魔王殿、これでは彼らの方が怠惰を司った方が適当といってもおかしくはない。一度私から厳しく注意させていただいてもよろしいでしょうか」

「そう言うなら構わんが俺の知らんところでやってくれ。今はそれぞれの現状を聞かせてもらいたい」

「んなら引き合いに出されたあっしら怠惰から言わせてもらいますかね……」

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「…んぅ……」

 おぼつかない意識のなか、重いまぶたを押し上げる。埋もれる程の綿詰めの山の中でバランスを崩しながらもなんとか起き上がった。

 暖色が多い綿詰めの山のなかに、緑色の短髪がぽつねんと身を起こしている図はさぞかし目立つだろう。すぐ隣を見ると王座がふたつ。

 ……また捨てられちゃったか…。

 もたない玩具は脇に捨てる。それがアスモデウスのやり方だ。まだ鈍い痛みの起きる腕を見ると、青白い死体のような肌にかすかな爪痕が残っている。じき完全に消えるだろうけど……。

「ふあぁ」

 王座にふたりともいないってことは誰か違う奴で遊び始めたのかな。それかお互いで求め合っているか。

 緑色のくせっ毛をくしゃっとかいて、両手を組んでぐっと前にのばす。背中で鴉のような翼がゆるくはばたく。

「あら、ルースト?」

「ん?」

 声の方を見ると、紫色のラミアがいた。

「ネア。どした?」

「どした、じゃないわよ。そこ、王座よ」

「王座はそっち、遊び捨てられたルーストは綿詰めの中に捨てられましたとさ」

「なあんだ。だからなんにも着てないのね」

 くすくすと楽しそうに笑われる。改めて確かになにも着ていないのと、アスモデウスの王座の肘掛けに衣装が雑にかけられているのに気付く。

「そっちは何しに来たんだよ」

 綿詰めの山の中でなんとか立ち上がり、王座の横で衣装を身に付けながらたずねる。

「アスモデウス様の予定を伝えに来ただけ。でももう行っちゃったのかしら」

「聞かれても分からないよ」

 ズボンをはきながら、王座までの階段を一気に飛んでおりてくる。

「ほんと、翼って便利よね。転ばないし」

「ネアは最初からないんだっけ」

「翼のない魔族だっているわよ。ま、確かに翼をちぎられる魔族もいるらしいけど」

「な、なにそれ」

 ぞわっとして翼を出来る限りたたんで背中に引き寄せる。

「噂ようわさ。七つの大罪に所属する魔族はその王に反逆すると翼を切られるって」

「反逆ってまた大層な…」

「ふふ、新入りをビビらせるための冗談よ」

「ネアの冗談は冗談に聞こえないから嫌いだな」

 ふたりはいっしょに王座の広間を後にしながら気まぐれに会話をはさんだ。

「ネアとはこうやって普通に話せるからそこは好きなんだけどなあ」

「あんたの司ってるものとあたしの司ってるものが似てるからよ。あんた、自由な快楽でしょ? あたしのは禁断の快楽。相手が禁断だと思ってくれてなきゃ意味がないの。だからあたしの場合大体誰といても……」

 ため息をつくネア。思いついて振り返る。

「ルクスリア様ならいいんじゃない?」

「あんたに言われてなくてもそんなこと分かってるのよ新入り」

「新入りって言ってももうしばらく経つけど」

「新しい子が来ないんだから仕方ないじゃない。色欲は新入りが少ないんだって」

「ふうん……」

 ルーストは答えながら、すぐ近くで盛り上がっていた1組の魔族を眺めやった。きらりと琥珀色の左目が光った直後、片方の反応が極端に跳ね上がった。くすっと笑いがもれる。

「気ままねえ…」

「自由ってこうでなくっちゃ。じゃあね」

 ネアがそれもそうねと答えてそのまま去っていく。ルーストはそれをちらりと見送ると、改めて1組に向き直って近づいていった。


→続く

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