-I'm still here-

一次創作のファンタジー物語と日常を気分で書き連ねる、サイト兼ブログ

眠りに落ちた魔法使い 

 

【ハネダさん宅】
お待たせしてしまいました…


 ラッキーだったのは道中誰ともすれ違わなかったことと、家主がまだ帰ってきていなかったことだ。

 玄関の鍵をなんとか閉めて、カナトはウィンクを背負い直して一息ついた。背負っているおかげで手が使えない。なんとか靴を脱いであがり、片目を閉じた。ひとつの目とふたつの腕を出現させて、ウィンクの靴を脱がせる。カナトの隣に靴を並べてから目を開けて、まっすぐ部屋へ向かった。念のためを思って足で器用にドアを閉めながら、ウィンクをベッドに寝かせた。ちょっと雑に降ろしてしまったけど、まあ、寝てるし。言わなきゃ大丈夫だろう。

 少し寝顔を眺めて、カナトは軽く唸った。起きる気配がまったくない。人助けの相手がここ最近味見したくてしょうがない存在ナンバーワンなのはある意味ラッキーだが、それがこうも意識を飛ばされていると出来る状態でもやってはいけない気がする。それに前回会った時と同様、家の中だ。以前彼に言い放った通り、ここで何か大事になりそうなことはできない。

「……しょうがない」

 自分に言い聞かせるようにあえて口に出して、カナトはパソコンの前にある椅子を引っ張ってきて座った。脚を組みながら出会った時の数少ない情報を整理する。

 まだ8月の終わりだというのにここに来たことは彼の本意では当然ないようだった。あの不機嫌そうな口ぶり……オンシーズンじゃない時の彼はまるで睡眠を邪魔されて不機嫌になった人となんら変わらない。

 改めてウィンクの格好を見て、カナトは腕を組んだ。どこかしら探せば売ってそうな長いパーカーに同じく安く手に入ってもおかしくなさそうな黒いタイトなパンツ。さっき脱がせた靴も黒いハイカットでどこでも買えそうな感じだった。

 つまるところ、世界観がここに合っていることがウィンクの一番の違和感なのだ。金髪に紫のメッシュ、深緑のとんがり帽子にすそがそれっぽいギザギザになっているコート。あの世界観を全力でスルーした装いがウィンクリン・ハロウィンであろうに、この格好。髪も真っ黒だし。パーカーと瞳も黒だったらもう誰だか分からないレベルだ。

 そして一番気にかかっているのは彼の発言。

 魔法がすっからかんで眠たくてしょうがない。あの凄まじい規格外次元潰しの魔法がすっからかん?

 最初に出会った時のことを思い返して、そんなまさかとウィンクの寝顔を凝視する。あのチート的な魔法が空になることなんかあるんだろうか。あるとしたらどれだけの大爆発を起こしてきたんだろう。

(……どっかの世界吹っ飛ばしてきたとか…?)

 あのテンションで? オンシーズンのテンションであろうが眠さマックスのモードであろうが、どちらの態度でもあれで吹っ飛ばされたらえげつなくおっかない。それこそただの狂人に……。

「…帰ってるのか?」

 少し脱線した思考に気を取られていたカナト、は柄にもなく飛び上がりそうになった。声は家主のものだ。

 鼓動の跳ね上がりを落ちつけながら、努めて冷静に部屋のドアを開けた。いつもなら鍵を開ける音で気づくのに。

「マナさんおかえりー」

「連れがいるのか?」

 家主のマナは無感動ななかにささやかな驚きとも訝しみともとれる調子で声をかけた。マナはカナトが都市伝説の化物ということは知っている。その上での今の隠しきれない調子なんだろう。それもそうだ。外にいるときになにをしているかもロクに話さなければ、今までにカナトが誰かをここに招待したこともないんだから。カナトは心中でやっちゃったな、と思った。ウィンクの靴を並べてしまったのは完全にミスだ。靴をそろえるという無意識の習慣が裏目に出てしまった。

「えっと、なんか家出して行き倒れそうだった子に会っちゃって……」

 あながち間違いではない。苦笑するカナトに、マナは赤いメガネの奥で片眉を上げた。

「ほう…?」

「今はまだ僕にもなにもしゃべってくれなくて。少しそっとしておいた方がいいのかな?」

 部屋から出てドアを閉めながら逆に尋ねる。きっと年頃の人間ならありそうなことだ。そう思わせればなんてことはない…と願いたい。

 マナは無表情ではあるが助けた相手を気遣う発言に一言だけ感想を述べた。

「お前のような化物が人を助けることもあるとはな」

「失礼だなー、僕は」

「分かってる。今日は少し残った作業もある、放っておくつもりなら先に今月の家賃を済ませてもいいかな」

「あ、そういえばまだだったっけ。いいよー」

 記憶をたどるような素振りを見せながら言いつつ、カナトの内心は部屋で寝かせたウィンクの存在がマナにバレやしないかという慣れない緊張感で占められていた。


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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
とっても久しぶりかつリハビリのような粗い文になってしまいましたごめんなさい…!
そして初チャレンジなマナさんの口調やら思考やらが合っているかとっても不安です……orz

以前書いて頂いた「おもてなしの味」ではウィンクがぱぱっと退場できましたが、意識がなければそれもできず、ということでカナトさんだけが内心ヒヤヒヤになる回……にしたかったつもりです。。

このまま勢いで終わらせたいながらもマナさんの描写については今一度あれこれご指導いただきたみ……ッ!!

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